双極性障害を抱える社員とサポートする上司 。互いに自分らしく働くために心掛けてきたこととは?【松浦秀俊/上司との対談 後編】

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株式会社リヴァで支援員として活躍する松浦秀俊(写真左)は、学生時代に発症して以来15年間、双極性障害Ⅱ型と付き合ってきました。以前は疾患の影響で短期間の転職を繰り返したこともありましたが、現職ではこれまでで最長となる約7年間、無事に働き続けることができています。さて、双極性障害を抱えながら安定的に働き続けるヒケツとは?松浦本人と、前職時代から彼の近くで働いてきた同社取締役の青木弘達(同右)が語り合いました。
→ 前編はこちらから

疾病と向き合い続けて
辿り着いた自分らしい働き方

―― 周りの人間が「気分の波」に気づくことは難しいのでしょうか?

青木:変化がくっきり表れず、気づくことが難しい方もいると思います。 でも、よく見ていくとそれぞれに変化しやすい特徴があるんです。例えば、松浦さんは睡眠時間やSNSの投稿頻度に大きな波があり、見た目としては表情に出るタイプ。軽躁状態の時は目が開いて、うつ状態の時は眠そうな目をしていて。あとは、いつも置いてあるお菓子が机の上から無くなるのもサインだったので、僕がチラつかせたお菓子に「それなんですか?」って興味を示してきたら正常だなって思ったり。

松浦:(笑)。私の場合、うつ状態の時は食への関心も減りますね。活動量は増えるので、痩せることも見た目のサインかもしれないです。

青木:松浦さんとはある程度の期間、一緒に働いていたのでサインに気づけましたし、信頼関係があったからこそ伝えることができました。変化に気づくためには、本人の了承を得て長い目で観察しながら気づいたら伝えるという作業を繰り返して、共通認識を持つことが必要だと思います。

―― 双極性障害の診断から約7年間が経ちますが、疾病との向き合い方に変化はありますか?

松浦:何でも一人でやろうとはしなくなりましたね。以前は自分がリーダーになったり、一から立ち上げて形にしないと納得できなかったのですが、「目標に向けて共感してくれる仲間を募ればより達成しやすくなるし、自分の波もコントロールしながら関われる」と思えるようになりました。

青木:疾病を持つ自分を理解して、向き合ってこられた証拠だね。辛いと思うけれど、松浦さんが努力してコントロールしているのが分かるから、周りも協力したくなるんだと思うよ。

松浦:振り返ると、双極性障害だと診断される前と後では別人だなと。「自分にとっての普通の状態は、気分が少し低めの時なんだ」と受け入れたことで、昔のような瞬間的にだけ結果を出す“短距離走的な生き方”を改めようと考えられるようになりました。自分のペースで少しずつ頑張る、マラソンのような生き方を続けていきたいですね。

 

 

―― そんなお二人が今後やっていきたいことは何ですか?

松浦:約7年間同じ職場で働けていることは強みだと思うので、双極性障害を抱えながらも働き続ける人間の一例として、情報発信を続けていきたいです。リヴァトレで働く中で、当事者同士が直接関わる大切さを実感しているからこそ、SNSやブログなどネット上の繋がりだけでなく、リアルなコミュニケーションの場も増やしていきたいなと。

青木:いいね。松浦さんには自分らしく生きてほしいし、疾病を抱えながら働き続ける姿に勇気をもらう人もいるとたくさんいると思う。

松浦:ゆくゆくは「双極性障害の方に特化したリヴァトレサービス」を作れたら…とも考えていて、より疾病への理解が深まったり、対処について考えることができるのではないかとも思ってワクワクしています。

青木:僕は「疾病を抱えているから配慮が必要なんだ」という考え自体がなくなったらいいなと。病気の有無に関わらず一人ひとりは違うのだから、個人に焦点を当てて生き方や働き方考えることが当たり前な世の中を目指したいです。

 

―― ありがとうございました! 最後に、双極性障害の当事者として心掛けていることと、ともに働く仲間として心掛けてきたことをお二人にまとめていただきました。

双極性障害の当事者として
心掛けていること

自己理解を深める

リヴァトレのプログラムの中で、軽躁やうつ状態になるきっかけやどのような対処ができるかをまとめた「自分の取扱説明書」を作成したことが、自分自身と向き合うきっかけになりました。気分の波をコントロールするには、まず変化のサインを認識して、働く中で対処法を試していくことが良いかと思います。

「得意」を仕事にする

自分の関心のある分野や相談しやすい環境など、気分が落ちていても無理なく取り組める仕事を選ぶことです。私の場合、「これだけはできる」という最後の切り札が仕事にあったので、自信を失わずに続けることができました。 また、リヴァでの支援職が1対1ではなく、チームで関わる仕事だったことで、一人で抱えてしまっている状況を同僚に伝えたり、知ってもらうハードルが低かったことも自分に合っていたなと思います。

気分の波が自覚できる環境を作る

青木さんのような軽躁状態もうつ状態もどちらも見てくれる人が相談相手であったことが良かったと思います。軽躁のサインを指摘される際に、うつ状態も含めた自分の全体を知った上での意見だと分かったことで信頼できたからです。 自分で気づくことが難しい病気でもあるので、話すことで自分の感情や症状を見つめ直し、対処を考えることもできます。身近な人が難しい場合は、主治医は勿論、カウンセラーなどの専門家を頼って疾病を開示することや、会社内の健康管理室の相談員などを頼るのも一つの手段かなと思います。

ともに働く仲間として
心掛けてきたこと

軽躁状態の変化について共通認識を持つ

うつ状態の症状を悪化させないためにも軽躁状態を抑えることが大切です。長い目で観察しながら気づいたら伝えるという作業を繰り返すことで共通認識が持てると思います。 「変化に気づいたら伝える」ということを落ち着いている(軽躁状態ではない)時に同意を取っておくとよいですね。本人が軽躁の自覚がないうちに一方的に指摘することは信頼関係を壊すことにもなりかねないので、気を付けたいところです。

事実ベースで状況を整理する

状況を悲観的に捉えて、自分を責めてしまう方も多いです。そんな時は、実際に起きていることだけを事実ベースで伝え、冷静に俯瞰することで気持ちを楽になると思います。過去の自分と比較をして出来るようになったことに目を向けてあげることも一つの方法ですね。

働き方の工夫をする

仕事の内容や量はもちろんのこと、雇用形態なども工夫しながらその人が持っている力を発揮できる環境を整えられると良いと思います。有期労働契約を1年結んで、疾病の状態をコントロールできそうであれば正社員として雇用するなど、段階を設けた工夫もできるかもしれません。

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この記事を書いた人
菅野 智佐 株式会社リヴァ 2018年度入社

1996年福島県生まれ。山形大学を卒業後、18卒として(株)リヴァへ入社。ラシクラ事業部・新卒採用の責任者を兼任しながら、新規事業「あそびの大学」の立ち上げに至る。自分らしいと感じる瞬間は「物事の背景を探求している時」。趣味は、DIYと金継ぎ。

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