双極性障害で働き続けるための攻めの有休【漫画/松浦さんの双極ライフ】

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松浦さんの双極ライフ『双極性障害で働き続けるための攻めの有休』01

松浦さんの双極ライフ『双極性障害で働き続けるための攻めの有休』02

解説コラム

双極性障害やうつで仕事を離れた人が復職・再就職を目指すための通所型トレーニングリヴァトレ」を利用していた頃の話。仕事への復帰が決まったある利用者さんの最終日の挨拶が、その後の私に良い影響を与えてくれました。

「これまで私は有給休暇を『何かあった時だけ取得する』という受身の使い方をしていました。休みを取ると周りに迷惑をかけると考えていたから。でもリヴァトレを利用したことで、以前の私が周りに配慮しすぎていたことに気づきました。これからは、自分の為に“攻めの有休”も取得していきたいです。」

その言葉に私は強い共感を覚えました。「攻めの有休」というネーミングにも感じるものがあり、双極性障害と付き合う「私なりの攻めの有休とは何か」を考えるようになったのです。

リヴァトレを利用する以前の私は「有給休暇は自分の都合で使うものではない」と考えていました。怪我やインフルエンザなど、やむを得ず休む時のために取っておく“保険的なもの”と捉えていたのです。同僚たちもそうしているように見えたし、休みを取る人をみるとどこかイライラを感じる自分もいたので、「自分は人にイヤな思いをさせてはいけない」と思っていたのかもしれません。実際、私は「休職の長期化→自己都合の退職」といった退職パターンを繰り返してきましたが、有給休暇を使い切らずに退職することが多かったです。

過去の双極ライフ『就職・転職時に起こりがちな困りごと』でも触れていますが、うつの症状が来る前、私には決まって軽躁により活動をし過ぎる時期があります。動き続けることで軽躁の症状が一層悪化し、さらにその反動で気分の落ち込み・抑うつ状態につながっていくのです。

自分でも「この悪いパターンを繰り返さないためには、軽躁状態で仕事にのめり込んでしまう時こそ、あえて休みを取る必要があるのではないか?」と感じてはいたのですが、それでも周囲に配慮しすぎて、有休取得を遠慮してしまいがちだったのです。そのように葛藤してきた自分にとって“攻め(自分から積極的にとる)”の有休という言葉はとてもしっくりくるものであり、背中を押してくれました。

この言葉だけを聞くと「アクティブに休みを謳歌する」といったイメージを持たれるかもしれませんが、私の実際の過ごし方はリフレッシュ(気分転換)ではなく、リラックス(心身を休める)が主。

  • 人からの刺激を避けるため、友人と遊ぶ予定などは入れない
  • お気に入りの喫茶店で静かに読書 
  • スーパー銭湯でゆっくり
  • 水族館でまったり
  • 夕方までには帰宅して余裕を持って予定を終える

…というふうに、穏やかに過ごすのが基本。

当初は私自身も「穏やかに過ごすなら家にいてもいいのでは?」と思ったりしましたが、家から出ないと塞ぎ込んで逆にうつっぽくなり、「適度に動いて環境を変えた方が私にとってはよいのだな」と経験的に気付きました(※)。
※これはあくまで松浦の場合であり、人によっては環境の変化が大きな刺激になる人もいる

そんな軽躁予防を想定した休みの過ごし方こそが、双極性障害を持つ私なりの“攻めの有休”。その後リヴァトレのスタッフになることを決めたときはまず、「入社半年勤務して有給休暇が使用できるようになったら、攻めの有休を使おう」と決めました。

攻めの有休を初めて使った時は「半年勤めた自分へのご褒美を自分で与えている」という感覚が得られました。自分を癒すことを目的とした休みはとても効果的で、いいメリハリともなり、翌日以降の仕事に対するモチベーション向上にもつながりました。その後も計画的にこうした休みを予定に組み込み、「上がり過ぎた状態」を防止することで、気分が落ち込む回数が減らせたし、継続勤務にもつながったと考えています。

ぜひ、皆さんも自分なりの“攻めの有休”を取得してみてください。

 

原案:松浦秀俊
作画:のんた丸孝
監修:佐々木規夫(産業医/精神科医)
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この記事を書いた人
松浦 秀俊 株式会社リヴァ リヴァトレ事業部

双極はたらくラボ編集長/公認心理師/精神保健福祉士

1982年島根県生まれ。21歳の時に双極性障害を発症。20代で転職3回休職4回を経て、リヴァの社会復帰サービスを利用。後に同社へ2012年に入社(現職での休職0回)。 一児の父。

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