今回は特別編として、”妻から見た双極ライフ”というテーマで私の妻に原案を作ってもらいました。 双極性障害の私をいつも支えてくれている妻目線の双極ライフ、ぜひご参考ください。
解説コラム
私は夫に双極性障害があることを知ったうえで付き合い始め、結婚を決める際にもあまり深く考えていませんでした。「なんとかなるだろう」と思っていたのですが、早々に厳しい現実に直面することに。
うつ寄りの時は一日中布団から出てこないし、話しかけても返ってくるのはほんの一言二言。夫が負担に思わないよう、私もそっと家事をしたり、子どもと過ごしたりしました。
一方、躁寄りの時は口調が攻撃的になり、ネットで注文した商品が山のように届きます。おしゃべりが止まらなくなると、できる限り付き合うようにしました。
うつと軽躁で驚くほど様子が異なることに圧倒され、気付けば私まで夫のアップダウンに巻き込まれていました。そして、自分の対応が適切なのか自信が持てないまま、不安な毎日を過ごしていたのです。
慣れない子育ても重なり、疲れがピークに達していたある日のこと。
ショッピングモールで買い物をしていた時、うちの子が突然泣き出しました。抱っこをしても、おもちゃで気をそらそうとしても、泣き止む気配はありません。私はイライラが募ってどうしようもなくなり、急いで帰宅。そして玄関に入るやいなや、置いてあった陶器の入れ物をめがけて、力いっぱい鍵を叩きつけてしまったのです。
我にかえった私は「このままでは子どもにつらくあたってしまう」「自分に余裕がなければ子どをあやすこともできない」と気付くとともに、「まずは自分の機嫌をとらなければ!」と思ったのでした。
そしてもう一つ、「これは夫との関係にも言えることだ」ということにも気づきました。夫の体調の様子をうかがい、良かれと思ってしていた行動が、知らず知らずのうちに自分自身を振り回し、首を絞めていたんだなと。「夫を支えたいと思うなら、まずは自分をケアする必要がある」、これは大きな発見でした。
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夫は変わらず、アップしたりダウンしたりの日々を送っています。でも家族として毎日をともに過ごしていると、新しい発見もあります。
昨年は、夫婦のメンタル不調が重なる時期がありました。夫はうつ期にあり、私は仕事の疲れが蓄積して、数年ぶりにうつ症状の兆候が表れていたのです。
夫婦になって何年かしてからは夫がうつ気味でも、自分の気持ちが大きく揺らぐことはなかったのですが、この時ばかりは「どうしよう、しんどいな」「この先大丈夫かな」と不安がよぎりました。
そこで私は、うつの時に行っていた対処法を思い返しました。過去の経験から「何もしなければ体調が悪化していく」と理解していたので、すぐに頼れる人に相談して、復調することができたのです。
この時はなんとか乗り切れましたが、長い人生、私はこの先もさまざまな壁にぶつかるでしょう。アップダウンにまつわるエピソードに事欠かない夫と一緒に過ごし、なかなか貴重な経験をさせてもらっています。とはいえ、まだまだ経験値が足りず、苦しい思いも多々あるわけですが。
だからこそ「まずは自分を大事にする」「自分の人生を生きる」という気持ちを、これからも心に持ち続けていきたいと思います。
「妻から見た双極ライフ」に関しては、Reme(リミー)でより詳細にまとめさせて頂いています。良ければそちらもご参考ください。
作画:のんた丸孝
双極はたらくラボ編集長/公認心理師/精神保健福祉士
1982年島根県生まれ。21歳の時に双極性障害を発症。20代で転職3回休職4回を経て、リヴァの社会復帰サービスを利用。後に同社へ2012年に入社(現職での休職0回)。 一児の父。