うつ病かもしれない部下との接し方で気を付けることは? 〜産業医が教える職場のメンタルヘルス対策〜

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皆さんは「うつ病かもしれない部下にどう接すればよいか分からない」といった悩みを持ったことはありませんか?

メンタルヘルス不調は決して珍しくありません。日本では、毎年1年間にうつ病の診断基準を満たす人の割合は約2%といわれています。これは1,000名規模の会社においては、1年間で20名程度がうつ病を抱えていることになります。

メンタルヘルス不調はうつ病だけではありませんから、その数はもっと多いといえるでしょう。

参考:厚生労働省ホームページ

今回は、部下にメンタルヘルス不調の可能性がある場合の、上司としての関わり方のポイントをお話ししたいと思います。

1.“サイン”をいち早く察知する

メンタルヘルス対策は「早期発見」が重要です。
部下の不調を見分けるには、次のようなサインに注意してください。

1.以前と比べて表情が暗く、元気がない 2.体調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる 3.仕事や家事の能率が低下、ミスが増える 4.周囲との交流を避けるようになる 5.遅刻、早退、欠勤(欠席)が増加する 6.趣味やスポーツ、外出をしなくなる 7.飲酒量が増える など

上記は、重要なサインではあるのですが、「一つでも当てはまればメンタルヘルスに問題がある」というわけではありません。

問題があるかどうかを見極めるには「いつも快活なのに最近は元気がない」「いつもはミスなく仕事をする人がミスを連発している」など「いつもの様子との違い」に気づくことが必要です。

そのためにはまず「いつもの部下」を知っておくことが欠かせません。

職場での普段の様子をよく見ておくことに加え、「何に興味を持っているのか」や「仕事のモチベーション」「大切にしていること」など、面談などを通じて人となりを理解しておくよう心がけましょう。

2. 声掛けなどの接し方はシンプルに

最近はパワハラやセクハラ、アルハラなどのハラスメント対策もマネジメントの課題として語られるようになりました。

その影響で、部下に対して過度に気を使う上司が増え、飲み会なども減少しているようです。

踏み込んだコミュニケーションの機会が減ったことで、調子が悪い部下に声を掛けることも難しくなったのではないでしょうか。

例えば、遅刻が目立つ若手社員がいるとします。口では「すみません」と言うものの、あまり悪びれた様子はありません。

そうした場合、昔なら厳しく注意されたでしょうが、最近の上司は体調に問題がある可能性や周囲への影響も考え、注意するのを躊躇するケースが多いようです。

原因が分からない場合は「最近は遅刻が多いし、仕事にも影響が出ているようだね。心配しているけど、何か困っていることがあるの?」とシンプルに聞いてみましょう。

頭ごなしに注意したり、放置したりするのではなく、原因を把握するために、仕事への影響を指摘しつつ、「心配している」という文脈で伝えるのが良いでしょう。

以下に具体例を記載しました。まずは、シンプルな言葉でいいので声を掛けてみてください。

3.部下の話を丁寧に聞く

マネジメントが上手な上司は、部下に話をさせることが得意です。部下から相談を受けると先回りしてアドバイスしたくなりますが、まずは、しっかりと部下の話に耳を傾けてください。

話を聞く目的は「情報を集め、状況を把握すること」と「安心して、仕事に前向きに取り組んでもらうこと」と理解してください。

話をする割合は「部下8割:上司2割」くらいが丁度よいでしょう。

仕事が原因だと分かった場合は比較的、解決策を提示しやすいかもしれませんが、家族との不和や健康問題など、すぐには解決できない問題もあるでしょう。

正解のない問題の場合、話を聞くだけでも十分な効果があります。「それは大変だったね」など共感しながら「一緒に考えたり、悩んだりする」という自体に意味があるのです。

時には、声を掛けても「大丈夫ですから」と話をしたがらない人もいます。そのような場合、私の経験的には8割方、大丈夫ではありません。

上司としては「せっかく、心配をして声を掛けたのに…」とモヤモヤすることもあるでしょうが、その気持ちは抑えて「いつでも相談にしてほしい」と伝え、相談の窓口を開いておくことが重要です。

4.上司としての姿勢やルールを明確にする

①職場で配慮すること・しないことの線引きを決める

産業医の立場で企業の職場を眺めると、上司が部下の要求に応じて配慮しすぎているケースが見受けられます。 過去に遭遇した事例では、復職後2年が経過しても、まだ通常の就業時間より1時間短縮した勤務をしている方がいました。おかげで周囲の業務負担が重くなり、不公平に思う社員も多いようでした。 また、別の事例では「疲労が溜まった場合は、水曜日に休む必要がある」という診断書を提出し、当然のように毎週水曜日に休んでいる社員もいました。出社時の様子は至って元気で「残業をするたびに休む」というパターンを繰り返していましたが、上司は「診断書に記載されているから仕方ない」と諦めていました。 このように、配慮すべきことなのか、それとも行き過ぎた配慮なのか、線引きが曖昧であることは望ましくありません。 メンタルヘルス不調と業務上のパフォーマンス低下に因果関係があるかどうかを判断するには、産業医に相談をして意見を求めるのも良いでしょう。 うつ病などメンタルヘルス不調の場合は「時間外勤務の制限」や「業務負荷の軽減」、「睡眠薬を服用した場合の営業車の運転の禁止」などが、就業上の配慮として必要となることがあります。 一方で、逸脱した遅刻や離席を大目に見たり、短時間勤務などがあまりに長期間にわたると、職場内での不公平感が高まる可能性も生じます。

②体調不調が続く場合は療養に専念させる

本人が「問題ない」と言って出社していても、仕事が手についていなかったり、休みがちだったりする場合は、いったん仕事を離れて療養に専念した方が良いこともあります。

体調の悪化を自覚していながら病院に行かずに放置し、やがて症状が悪化してしまう…というのは、よくあることです。

上司として「一度、病院にいって診てもらったらどうか」という提案をすることも、本人の助けになります。療養に専念させるべきかどうか迷う場合は、下記を参考にしてください。

・勤怠が安定しない(週2日以上の休みが一定期間ある) ・「死にたい」といった言動が見られるなど希死念慮が高まっている ・リストカットするなどの自傷行為が職場で起きている ・大声を出す、喚き散らすなどの迷惑行為をしている ・他者への暴力行為など、他害行為がある ・すでに医療機関からの療養に専念すべきという診断書が出ている

③復職後は必要な配慮はしながらも、特別扱いをしない

部下が職場復帰する際、どのように迎えたらよいのか悩むこともあるでしょう。

ある研究によると、うつ病などの気分障害から復職した人が5年以内に再休職する割合は約50%、休職した者の約30%は復職後1年以内に再休職するようです。

参考:>H29年度日本フルハップ研究助成報告書(公益財団法人日本中小企業福祉事業財団、2017年

そのため、やはり復職時には、一定程度の勤務時間や業務内容に対する配慮は必要なのです。体力が低下している復職直後は、休職前と同じ業務量をこなせない場合が多く、段階的に業務量を増やしていく方が安全でしょう。

一方で、復職者に対して腫れ物に触るような扱いをし、手持ち無沙汰になるほどの過剰な業務軽減をしているケースも見られます。「職場ですることが無い」「周りは忙しいが一人だけ暇」といった状況にならないような配慮も必要です。

チームの一員であることを実感できる「所属感」やチームに役立っているという「貢献感」はメンタルヘルスには重要な因子です。「働かせすぎ」だけでなく、「働かせなさすぎ」もメンタルヘルス不調の再発リスクとなり得えます。

復職から数か月~半年が経過した段階では、就業制限のない通常勤務となっていることが多いと思います。もちろん、体調によっては残業をさせるべきではないかもしれませんが、少なくとも通常の勤務時間中は特別扱いすることなく、周囲と同様の業務を行ってもらうのがよいでしょう。

復職後の1年間は再休職が多い時期です。定期的な面談を行い、体調確認をしながら、基本スタンスとしては「普通の対応をすること」が良いように思います。

5.最後に

メンタルヘルス不調を抱えた部下への接し方は、本人のみならず、周囲に対しても何らかの影響があります。「本人の気持ちは分からないし…」という管理職のなげやりな言葉を聞くことがありますが、本音だとしても、それを前面に出すのは得策ではありません

メンタルヘルスやモチベーションを管理しないチームの生産性が低いことは明白ですから、対応を放棄した上司は、自らの職場を諦めているともいえます。

人が人の気持ちを理解することは、非常に困難ですが、誤解を恐れずに言うと「分かったふりをする」ことも重要です。

仮に分からなくても、部下にとっては「同じ目線を持ってくれる上司がいる」という思いが心の支えになり、仕事へのモチベーションに繋がるものなのです。

上司の「感度の高さ」は職場の健康に寄与すると思います。

この記事の内容が、明日からの参考になれば幸いです。

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この記事の監修
佐々木 規夫 東京中央産業医事務所

産業医/精神科医
産業医の実務のエキスパートとして多くの企業の健康管理に従事する。
メンタルヘルス対策では、体制作りから事例対応までの予防活動を担う。

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