ADHDの人はうつ病にも注意?数字でみる二つの関係性と、併発時の対応方法について

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ADHDの人はうつ病にも注意?数字でみる二つの関係性と、併発時の対応方法について

この記事に興味を持って来られた方は

・「ADHDとうつ病について何か関係があるのではないか?」
・「自分はADHDでうつ病だけど、どうしてしんどくなるのだろう?」
・「ADHDはうつ病に注意って何を注意したら良いのだろう?」

など、ADHDに関して様々なことを考えているのではないでしょうか。

今回の記事を通じて、ADHDとうつ病がどのような関係があるのかを一緒に確認していきましょう。

そもそもADHDとはどんな病気?

ADHD(注意欠如・多動症、注意欠如・多動性障害)は、注意欠如多動性衝動性という行動の特徴がある発達障害の概念の1つです。ADHDの有病率は諸説ありますが、学齢期の児童の20人に1人が発症しているとされています。大人になって症状が落ち着く人もいますが、「大人の発達障害」としてADHDの症状が残る場合が多いです。

ADHDの症状

ADHDの症状は、注意欠如・多動性・衝動性という3つの特徴から分類されます。それぞれの症状の一例をみてみましょう。

①注意欠如

・不注意な間違いが多い
・活動中に注意を維持することが難しい
・忘れ物が多い
・片付けが苦手
・集中ができない
・順序立てて考えることができない

②多動性

・落ち着きがない、じっとしていることができない
・席を離れて動き回る
・決められた順番を待てない
・質問が終わる前に話を始める
・多弁:おしゃべりが多すぎる

③衝動性

・周りのことを考えずにすぐに行動をする
・他人の行動を妨げる

①〜③の特徴による症状が、単独で出現せずに混合して出現することもあります。小児期に発症、学齢期の12歳頃までには症状が出現します。

ADHDの原因

ADHDの原因は諸説あり、はっきりと解明されていません。諸説として挙げられる原因の一部を以下でご紹介します。

・脳内におけるドーパミンの機能障害
・遺伝
・出産時のトラブル等による脳のダメージ 等

ADHDの診断基準

アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・分類であるDSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版』)にADHDの診断基準が記述されています。[1]

1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること

3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

 

上記の診断基準に合わせて

・症状が半年以上持続しているか
・日常生活、学業に悪影響を及ぼしているか

を考慮して診断される可能性があります。

ADHDの治療方法

ADHDの治療方法として「環境」・「行動」・「服薬」の3つのアプローチを組み合わせて治療を行っていくことが効果的とされています。

 

①環境

周囲の人にADHDの症状について説明し理解を求めたり、規則正しい生活リズムになるように見直したりして、職場などの生活環境を整える方法です。生活環境を整えることで、失くしものを減らし、気が散りにくくなるなどの副次的効果があるとも言われています。

 

具体的には

・掲示物の視覚的刺激を少なくして分かりやすくする
・物や人の配置による視覚、聴覚等刺激を減らす
・タイマーを活用するなど細かい時間設定をして短時間でも集中できるようにする

といった環境を整える術を身に着けます。

 

②行動

考え方や行動の偏りを把握し、自分の認知や行動パターンを整えていくことで、生活や仕事上のストレスなどを減らす術を身に着けることを目的とした認知行動療法などが効果的とされています。リヴァトレでもその人の特性に合わせたストレス対処や職場での働き方の工夫について対策を立てるようなプログラムがあります。

 

以下の記事はADHDの方の事例ではありませんが、認知行動療法がどのように役立つのか、その具体的なエピソードが一部紹介されています。ぜひ参考に読んでみてください。

 

③服薬

精神科を受診して薬物療法を行っていく方法です。服薬を続けていくことで、「注意欠如」・「多動性」・「衝動性」という行動の特徴を軽減することができる場合があるとされています。詳しくは主治医に確認してみましょう。

ADHDの人はうつ病になりやすいって本当?

ADHDの人は、うつ病になりやすいと耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。今回、ADHDとうつ病の関係性について調べてみました。

数字でみるADHDとうつ病の関係性

Neuropsychiatr DisTreaの調査によれば、大人のADHDのうち、約8割の方が何かしらの別の精神疾患にも罹っているとされています。[2]

また、合併症の種類とその割合としては、

・大人の ADHDのうち、約2割にうつ病の症状が見られる
・大人の ADHDのうち、約2割に双極性障害が見られる
・大人の ADHDのうち、約5割に不安障害が見られる

とされています。

以上の調査結果から、大人のADHDの約5人に1人はうつ病を併発し、同じく約5人に1人が双極性障害を併発していることがわかります。また、約2人に1人は不安障害を併発していることがわかります

なぜADHDの人はうつ病になりやすいのか

ADHDをもつ人は、課題の遂行や努力の継続、整理整頓、時間管理に困難さを抱えることがあります。そのため、幼いころから本来の自分の力を十分に発揮できなかったり、課題を達成できないことから自信を失い低い自己評価する人もいます。さらに周囲の人から注意されたり、叱責されることでさらに自己肯定感や自尊心の低下にもつながります。

こうしたことが積み重なることで、二次障害として、精神面における支障、心身の健康状態が悪化していきます。そういった背景から、ADHDの人はうつ病になるリスクが高くなる傾向にあるとされています。

ADHDの人がうつ病を併発した場合の対応方法について

ADHDの人がうつ病を併発した場合は、まずは、二次障害として発症しているうつ病の症状を安定させる治療を優先しましょう。うつ病の症状が安定していない状況が続くと、ADHDの服薬治療を中断する可能性も考えられます。また、認知行動療法はADHDにもうつ病にも効果があるとされていますので、併発してしまった際は一度検討してみてください。リヴァトレでも認知行動療法は取り入れています。

リヴァで行っているサービスについて

休職後や退職後、まず必要なのはゆっくり休むことですが、徐々に回復してくると今後の生活やキャリアについての不安が出てくるかと思います。

リヴァでは「リヴァトレ」という職場復帰支援(リワーク)を行っており、職場へ通勤するようにセンターへ通いながら、よりよい復職・再就職を目指すトレーニングをすることができます。

主治医から復職の許可が下りても、すぐに職場に復帰したり、あるいは就職活動をするのは不安であったり難しく感じられる方もいるでしょう。体調が回復し今後の生活やキャリアについて考える余裕が生まれた段階で、一度相談してみるのはいかがでしょうか。

また、センターへは週2日から通所可能なので、完全に回復していない方でも少しずつトレーニングをすることができます。

特に以下の方にお勧めです。

  • 働くための生活リズムを整えたい方
  • 服薬と休養以外のストレス対処法を身に付けたい方
  • 職場で働く力の回復・向上を目指したい方
  • 働き方・生き方の再構築をしたい方

センターの無料見学・体験も可能です。また『よくある質問』についてもまとめておりますので、ご参考ください。
(参考:リヴァトレ よくあるご質問

さいごに

ADHDの人とうつ病の関係についてまとめると、以下のようになります。

① ADHDの約5人に1人はうつ病を併発している
② うつ病を併発した場合は、うつ病の症状を安定させる治療を優先する
③ 認知行動療法やストレス対処法を行うことでADHDの困り感やうつの症状から回復することがある

ADHDの人はうつ病にも注意が必要になるということを知ってもらえたら幸いです。

 

【引用・参考資料】

・[1]厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

[2]Neuropsychiatr DisTreat .2017; 13:357–371

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西本真証様
この記事の監修
西本 真証 センクサス産業医事務所 パートナー医師

産業医科大学 医学部医学科卒業。新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、産業医科大学 非常勤助教。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。

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