「うつからの社会復帰支援(リワーク)サービス」で宮城県の課題解決にも貢献したい ― リヴァトレ仙台センター長・吉田淳史インタビュー

7,601 views

2019年4月にオープンした「リヴァトレ仙台」は、都内に4つのセンターを構えるリヴァトレの“地域拠点第1号”となります。さて、地域密着型センターを目指すリヴァトレ仙台では、どんな復職(リワーク)・再就職サービスを提供しながら、宮城県の課題解決に貢献していくのでしょうか?同センターの責任者である、吉田淳史センター長に話を聞きました。

リヴァトレ仙台とは?

リヴァトレ」は、うつ病や双極性障害、不安障害、適応障害などの精神疾患により仕事を離れている方のための「社会復帰支援サービス」です。

利用者さんはまず、会社へ出勤するように通所しながら、生活リズムや生活習慣を整えていきます。

その後、ご自身のペースに合わせて「疾病の再発を予防する心理プログラム」や企業研修のノウハウを活かした「職場で働く力の回復・向上を図るプログラム」、「自分に適したキャリア観を養うプログラム」などへの参加を通じて復職を目指します。

上記に加えて、離職中の方には「面接ロールプレイ」や「職務経歴書レビュー」、「職場体験実習(=インターン)」といった、再就職に向けた支援を提供します。

うつ病などによる休職者の
リワーク支援にも注力

東京にはリヴァトレのような民間のリワーク(うつ病などで休職した場合に職場復帰に向けた訓練を行う場所)に加え、約30か所ほどの精神科病院やクリニック(医療系リワーク)が存在しますし、札幌・広島・福岡などの地方中枢都市圏にも、医療系リワークは複数あります。

一方、現在仙台市内にある主なリワーク施設は、行政が運用する「宮城障害者職業センター」と「仙台市精神保健福祉総合センター」の2か所。

そして、いくつかの就労移行支援事業所が休職者を数名受け入れている状況です。

精神疾患による休職者の割合は各種制度の整っている公務員でも1%程度と言われています。

仙台市内の事業所に勤める従業員数は約56万人のため、リワーク支援を必要とする人の数に対し、利用できるサービスは不足していると現状考えています。

また“支店経済都市”といわれる仙台は、休職時の窓口となる人事の機能を備えた企業が少なく、産業保健と地域医療に関わる人の数、ネットワークも他都市に比べて不足しているようです。

さらに、医療関係者にもリワークに対する理解が十分に浸透しているとはいえない状況だと聞きます。

仙台センターの開設準備に取り組む中で、こうした状況に問題意識を持つ産業医や企業内カウンセラー、EAP機関、リヴァと同じ民間支援機関の方々と繋がることが出来ました。

まずは、このネットワークを強化し、力を合わせていくことで、仙台の休職者にまつわる 課題解決に貢献していきたいと思います。

リヴァトレ仙台のスタッフたち

納得感のある働き方を
自分で選択できるように

疾病を抱えるとどうしても視野が狭くなりやすく、自分への諦めの気持ちから、障害者雇用ありきの再就職を望む方が多く見られます。

支援者も「障害者雇用なら安心した環境で働ける」と、画一的に薦めてしまいがちです。

しかし、障害者雇用の場合、限定された業務内容や給与水準の低さから、就労後に本当にやりたいこととのミスマッチを感じる事例も少なくありません。

自分が調子を崩すきっかけや思考パターン、対人関係など、悪循環に陥いる構造を理解し、再発予防策を身に付けることで、クローズ(障害を開示しない一般枠応募)での再就職をし、働き続けている方もいます。

 

一度立ち止まって、可能性を広げて情報を収集し、得た情報から一歩踏み出してみる。例えば、インターンシップなど通じて新しい職業を体感することもできます。

このインプット・アウトプットを繰り返す中で視野が広がり、はじめて自分の軸が出来ていく。この段階で選択肢を絞ることができればよいのではないかと考えます。

その結果、一定の配慮を重視するのであれば、オープン(障害を開示した応募)での就職という選択もあります。

しかし 、宮城県内の民間企業における障害者雇用率は、1.94%と全国平均1.97%を下回り、全国的に見ても低位です(厚生労働省平成29年「障害者雇用状況の集計結果」)。

そのため、企業への支援も行うことで、本人にとってより良い形での障害者雇用の実現を目指していきます。

オープンでの就職とクローズでの就職。どちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、「様々な選択肢があるのだ」と視野を広げたうえで、納得感を持って、自分の生き方を選択していけるような支援を行っていきたいです。

このような支援の結果、「宮城県における障害者雇用率の上昇」に寄与していきます。

東京で培ったノウハウを活かして
地域でも適切な支援を提供したい

サービス提供開始以来、7年間で約650名の復帰者を輩出してきたノウハウを活かし、仙台でも事業を軌道に乗せ、丁寧に実績を積み重ねていきます。

そしてゆくゆくは、宮城県の1000人当たりの不登校児童生徒数が2年連続(2016-17年度)、全国ワースト1位(文部科学省平成29年度「児童生徒問題行動・不登校調査」)という課題にも取り組んでいきたいです。

学生時代の受験の失敗やひきこもり体験によって「レールから外れてしまった」という思考に陥り、中々社会に復帰出来なくなってしまう人は少なくありません。

社会に出てからも、一度メンタル不調で休職してしまうと「外に出る機会を逸する→状態が良くならず退職→絶望感も状態改善の妨げとなりって引きこもる」といった負の連鎖が起こりがちです。

経済的な問題も重なってくると 、さらに複雑かつ長期化することから、深刻な課題だと認識しています。

リヴァトレを仙台でも展開することで、当事者やご家族の人生をよりよいものとすることはもちろん、うつによる社会的損失の抑制や、地域の精神医療や産業保健に貢献していきます。

◆ 各種SNSでも情報配信中です!
トップ
トップ