うつで休職中の人が、冬の時期に症状を悪化させないために心がけたいこと

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冬は夏に比べて日照時間が短くなるのに加え、寒さのために外出の機会が減りがちです。それによって気分の落ち込みなど、心身の不調が起こりやすい季節とも言えるでしょう。

この記事では、うつなどの精神疾患で休職中の方を対象に、冬の寒い時期に症状を悪化させないための過ごし方を紹介します。

冬にうつの回復が妨げられる理由と対処法

冬は日照時間が短いため、日光から受ける刺激が少なくなります。日を浴びる時間が短くなると、セロトニンという神経伝達物質の分泌が抑制されたり、メラトニンという神経伝達物質の分泌が増加したりします。セロトニンの分泌量が低下することにより、抑うつ症状が生じ、メラトニンの分泌量が増加することにより過眠が生じます。その結果、睡眠時間の乱れが昼間の活動量低下につながり、今度は夜に睡眠がうまくとれなくなり、そのことにより気分がすぐれないという悪循環に陥ることもあります。

また「年末年始の慌ただしさで心身ともに落ち着かない」と感じたり「春が近づくにつれ社内環境の変化が気になりだす」などの心理的な負荷もあるでしょう。

うつで休職中だと、普段に比べて定期的な外出の機会が普段に比べて限られます。うつの療養にはしっかり休むことに専念することが必要な期間もありますが、生活リズムを整えて活動量を増やす段階になってきても、冬だと外出するのに思い切りが必要だったり天候の影響で予定が変更になったりと活動が億劫になってしまい、仕事を想定した生活リズムに戻すのが難しい側面もあります。なお、療養中で今どれぐらいの活動量が適切か迷う方は、主治医に相談してみることがお勧めです。

ご自身でできる対処法としては、日の光を浴びる機会を増やすことと、行動することによって気分の変化を生み出す方法が挙げられます。朝起床したらまずカーテンをあけて日の光を浴びるようにしましょう。短い日照時間であっても、日が出ている時間にできるだけ外出するとよいでしょう。晴れの日だけではなく雨や曇りの日でも十分な光の量です。外出が難しい時はベランダに出たり、窓際で過ごすことから始めてみましょう。

また心理的負荷に対する対処法はいろいろありますが、ここでは行動活性化療法を紹介します。認知行動療法の一つであり、ポジティブになれる行動を徐々に増やすことで気分を変えていく方法です。詳しくは下記をご覧ください。

生活リズムを整えるための3つのポイント

冬でも活動量を維持するには、生活リズムを維持することが大切です。生活リズムを整えるためには「運動・食事・睡眠」の3つのポイントを意識した生活を送りましょう。ここからは、基本的な生活リズムを維持するための運動・食事・睡眠について紹介します。

生活リズムを整えるためにできる運動

生活リズムを整えるためには、軽い運動を継続的に行うことが大切です。ウォーキングや軽めのジョギング、ストレッチなどのゆったりできる運動や、水泳・水中ウォーキングなどがお勧めです。

雪の降る日や気温が低くて寒い日は外出しづらいこともあるでしょう。そんな時は家の中で身体を動かしてみましょう。家の中で行える運動としては、ラジオ体操もよいでしょう。ラジオ体操は子どもから高齢者まで幅広い年齢層がこなせる内容かつ、短時間(ラジオ体操第一・第二それぞれ約3分間)で全身運動ができるため、気軽に取り組めて効果を実感しやすいかもしれません。

他にも、YouTubeなどインターネットでは多くのストレッチ動画を見ることができますし、様々なフィットネスゲームやアプリもあるので、気軽にできそうなものから取り入れてみましょう。

体の調子を整える寒い時期にお勧めの食事

冬は体の熱が逃げないようにするネギ、大根、生姜などがお勧めです。他にも、かぶ、ごぼう、レンコンなどの根菜も身体を温めると言われています。食べ方によっても効果が変わるため、冬は温野菜やスープ、鍋料理のように加熱した料理がお勧めです。

また、1日3食とることが大切ですが、その中でも特に1日のスタートとなる朝食は重要です。朝食をとることで体内の温度が上がり、脳と体がしっかり目覚めやすくなります。

そのため、食欲がなくても、ヨーグルトやバナナ、シリアルなど手軽に食べられるものから始めてみてください。

質のよい睡眠を取るためにできること

太陽の力は睡眠のリズムを整えるためにも重要です。起きて光を浴びると、光の刺激が目を通って脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分に届き、体内時計がリセットされます。さらにその15時間後に眠気が催されるという体内時計も人間には備わっています。

質のよい睡眠のためには寝る前の過ごし方が大切ですが、特に入浴の時間や仕方を工夫することがポイントです。入浴は寝る1〜2時間前までに済ませておくとよいでしょう。眠くなるのは体が暖まったタイミングではなく、一旦上がった体温が下がるタイミングなので、この時にベッドに入ると入眠しやすくなります。

入浴時はぬるめの湯船に15分〜20分程浸かるのがお勧めです。熱い温度の湯船につかると交感神経が優位になって入眠しづらくなるため、夜寝る前はぬるめの温度のお湯に浸かり、体をリラックスした状態にしましょう。

シャワーだけで済ます場合は、首の後ろ、手首、足首の3首を重点的に少し熱めのシャワーを当てましょう。3首は皮膚が薄く、表面近くに太い血管が通っているので外気の影響を受けやすく、体の冷えにつながりやすい箇所です。その部分を温めることで、熱を体に行き渡らせることができます。

また、下半身も冷えがちなので、ふくらはぎから下に熱めのお湯を当てて温めましょう。入浴が難しい場合は、ストレッチやマッサージで体温を少し上げるだけでも効果的です。他にも、洗面器に少し熱めのお湯を入れて足湯をするのも、リラックス効果が期待できてお勧めです。

自律神経の切り替え力をアップして、季節の変化に対応しやすくしよう

自律神経とは、内臓や血管の働きなど、生命を維持するために24時間常に全身をコントロールしている神経のことです。交感神経と副交感神経の2つに分かれており、交感神経は身体を活発に動かすときに優位になり、逆に副交感神経は主に身体を休めるときに優位に働きます。

冬の寒い時期、私達の体内では自律神経が体の中に貯めた熱を逃さないようにして体温調整を行っています。しかし、自律神経が乱れていると、この体温調整がうまくできず体調を崩しやすくなります。

体温調整をうまく行うためには、上記の3つのポイントを意識すると共に、交感神経と副交感神経の両方が働くような生活をすることも大切です。そのためには「暑いときには暑く、寒いときには寒く」というように、ある程度ストレスをかけることも必要です。

現代人は冷暖房完備の環境で過ごすようになり、本来備わっていた体温調節の機能が落ちてきていると言われています。人間の体は快適で楽な方へ状態を合わせるため、エアコンの効いた部屋で長く過ごしていると自律神経の働きが鈍り、交感神経と副交感神経の切り替えが上手くいかず体調を崩しやすくなります。

そのため、日頃から適度な暑さや寒さに体を慣らしておくとよいでしょう。寒いときはついコタツや布団の中でぬくぬくしてしまいがちですが、夜寝るときは暖かくしても、日中はなるべく外に出て体を動かすよう意識してみて下さい。その場合も急激にではなく、徐々に寒い環境に身体を慣らしましょう。「暖かい部屋から外出するときは早めに暖房を切っておく」等の工夫ができるとよいですね。

自律神経の切り替え力がアップすることで体が熱を作ったり、熱が逃げないようにする機能が働き、冬をうまく乗り切ることができます。

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この記事の監修
武石 純子
株式会社リヴァ リヴァトレ事業部 精神保健福祉士・公認心理師

精神保健福祉センター、精神科クリニック、精神科病院での勤務を経て、2019年に株式会社リヴァに入社。就労移行支援施設「リヴァトレ仙台」にて、心理系プログラムを中心にサービス提供を行っている。

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