公立教員の休職手続きとお金の話。病気休暇・3年通算ルール・傷病手当金などを解説

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心身の調子を崩して病院を受診し、医師から「休職したほうがいい」と言われても、すぐには決断できずにいる教職員の方も多いのではないでしょうか。

学期の途中で抜けることになる。担任しているクラスの児童や生徒のことが気になる。休んでいる間の収入はどうなるのか。いろいろな悩みがあることでしょう。

公立の教員には、病気休暇から復職まで段階的な制度が整っています。休みに入った瞬間に収入がゼロになるわけではありません。休職期間の上限や傷病手当金を得られる時期など、事前に知っておいていただきたいことはたくさんあります。

この記事では、公立学校の教員を対象に休職の手続きの流れ、休職中のお金、復職に向けた準備までを解説します。

制度の全体像がわかると、いま何から考えればよいかが見えてくることもあります。無理のない範囲で、関心のあるところから読んでみてください。

教員が「休職していいのか」と迷ったときに考えたいこと

教員は日々の授業以外にも、担任業務、部活動、保護者対応とさまざまな仕事を抱えています。学期の途中で抜けることをためらう方も多いと思います。

ただ、近年は教育現場のメンタルヘルスが課題として広く認識されるようになり、精神疾患で休職する教員も少なくありません。

もし、ご自身が医師から休職を勧められている場合は、無理せず休職しましょう。

医師が早めに休職を勧める理由は、悪化してからでは回復により時間がかかることが多いためです。休職して心のケアに専念した方が結果として復職が早まる可能性があります。

まずは、医師の意見や診断書の内容を受けて、いまの自分の体調を整理してみましょう。休むかどうかは、医師や勤務先と相談しながら決めていくことができれば問題ありません。

では、休職はどのような手続きで進んでいくのでしょうか。次の章で、病気休暇から休職までの流れを確認していきます。

教員の休職制度の概要と手続きの流れ

教員の休職は、まず「病気休暇」を取得し、それでも回復が見込めない場合に「病気休職」へ移行するという流れになっています。

ここではそれぞれの期間や条件、実際に休みに入るまでの手続きを順に確認していきます。

まずは最大90日間の病気休暇

教員が休職するとまず検討されるのが、「病気休暇」です。

病気休暇は、短期間のケガや病気の療養などで取得でき、通常の年次有給休暇とは別に付与される休暇です。給与は全額支給されます。

公立教員の場合、最大90日間取得でき、期間中に復帰が見込めない場合は「病気休職」に移行します。

病気休暇で回復しない場合は休職へ移行する

病気休職に移行した場合、最長3年まで取得することが可能です。ただし、病気休暇と異なり、復職には診断書と医師の意見が必要になります。

休職開始から1年間は給与の約8割が支給されますが、休職期間が通算3年を超えると免職の可能性があるなど病気休暇とは条件が異なるため、注意が必要です。休職中の給与や3年通算ルールについては、この記事内でも解説しています。

病気休暇・休職に入るための手続き

手続きは、病院の受診・診断書の受け取り・管理者への報告の3段階で進みます。

まずは心療内科や精神科を受診します。医師は以下の情報をもとに診断書を作成するため、次の3点を伝えられるようにしておきましょう。

  • 現在の症状
  • 担当している学年や部活動などでの業務状況、職場環境
  • どんなことをつらいと感じているか


診察は10分程度で終わることもあるため、話す内容をまとめておいて事前にメモを用意しておくと安心です。医師が休養の必要を認めれば、病名と療養期間が記載された診断書が発行されます。

診断書を受け取ったら、校長や教頭に報告します。出勤が難しい場合は、まず電話で連絡するのも1つの方法です。

どう伝えればいいかわからない場合は、以下の関連記事で休職を報告する際の伝え方を解説していますので参考にしてください。直接伝える電話、メールでの伝え方をそれぞれ記載しています。

教員が知っておくべき「3年通算ルール」

教員が休職できる期間には上限があり、最長3年までとなっています。また復職後に同じ病気で再び休職すると、前回の休職期間と合算されます。
前回1年間休職していれば、次に使えるのは残りの2年と休職期間が短くなります。

一方、復職から1年を超えていれば、通算の対象にならないとされています。
通算される条件や対象外となる条件については、自治体によって異なります。ご自身の勤務先のルールがどうなっているのかを、教育委員会や事務担当に確認しておくと安心です。

「3年通算ルール」の詳細については、以下の記事で解説しています。

休職中の給与・ボーナスはどうなる?

休職を考えるとき、お金のことが心配だという方も多いでしょう。

結論からいえば、休職した瞬間に収入がゼロになるわけではなく、公立の教員には段階的に収入を支える仕組みが用意されています。

ここでは、給与・ボーナス・退職金・社会保険料の4つについて、休職するとどうなるのかを見ていきます。

給与について

休職中の給与は休みの段階に応じて、次のように変わっていきます。

  • 病気休暇(最大90日):全額支給
  • 休職1年目:約8割支給
  • 休職2年目以降:無給になる場合がある


それぞれの時期に、具体的にどの程度の金額を受け取れるのかを確認していきましょう。

病気休暇中は全額支給される

初めて休職してからの約3ヶ月(90日)は「病気休暇」となり、給料は全額支給されます。

基本給はそのまま支給されますが、「通勤手当」や「特殊勤務手当」など勤務実績などに応じて支給される手当は、支給されない場合があります。

休職1年目は8割支給される

病気休職中の給料は、各自治体によって異なりますが、休職1年目は給料全額の8割が支給される場合が多いです。

ただし、口座に振り込まれる給料は、税金が天引きされて支給されます。支給される給料の全額が口座に入るわけではないため、注意しておきましょう。

2年目以降は無給になる可能性がある

休職が長期化すると、自治体の規定によっては、休職2年目以降に勤務先からの給与が支給されなくなる場合があります。

ただし、給与が支給されなくなったからといって、必ずしもすぐに収入がなくなるわけではありません。一定の要件を満たせば、公立学校共済組合から「傷病手当金」を受け取れる場合があります。

傷病手当金の支給額は、原則として標準報酬日額の3分の2程度です。支給期間は同一の傷病について最長1年6か月となっています。

さらに、傷病手当金の支給期間が終了した後も療養が必要で、組合員資格が続いている場合には、「傷病手当金附加金」が最長6か月支給されることがあります。

なお、給与の支給期間や傷病手当金を受け取れる時期などは、自治体や置かれている状況によって異なります。詳しい内容は、勤務先の事務担当者や所属する公立学校共済組合の支部に確認しましょう。

ボーナスへの影響

公立の教員には、6月と12月にボーナスが支給されます。病気休暇や休職した期間があると、この金額が減る場合があります。

教員のボーナスは、主に2つに分かれます。

  • 期末手当:在籍していた期間に対して支払われる
  • 勤勉手当:成績と実際の勤務期間に対して支払われる


在籍していれば支給される期末手当に対し、勤勉手当は実際に勤務したかどうかが影響します。そのため、休みの種類によって次のように変わります。

ボーナスの金額

病気休暇

算定対象期間中の勤務日数・勤務成績に基づく(長期の休暇で減額の可能性あり)

病気休職

なし、または大幅な減額


算定対象期間とは、ボーナスの支給額を計算するために、在職期間や勤務実績を確認する対象期間のことです。

いずれにしても、休職期間が長くなるほど、ボーナスの額は少なくなります。生活費の見通しを立てる際は、この点も含めて考えておくと安心です。

なお、支給の基準は自治体によって異なります。詳細は勤務先の給与規定をご確認ください。

退職金への影響

「休職すると、将来の退職金が大きく減ってしまうのでは」と不安に感じる方もいるかもしれません。退職金への影響は、病気休暇と病気休職で異なります。関わってくるのは、勤続期間の数え方です。

・病気休暇の場合
退職金への影響はなし。休んだ期間もそのまま勤続期間としてカウントされる。

・病気休職に移行した場合
休職した期間の「半分(2分の1)」が、勤続期間からマイナスされる。

例えば、20年働いて1年休職していた場合、休職した期間の半分である6ヶ月分がマイナスされ、19年6ヶ月が退職金の期間対象となります。

休職している期間すべてが勤続年数から差し引かれるわけではありません。ただし、休職が長引けば、その分だけ影響は大きくなります。

とはいえ、退職金を気にして復職を急ぐと、再度体調が悪化し、かえって休職期間が延びてしまうこともあります。まずは回復に力を注ぐことが、結果として影響を小さくすることにつながります。

社会保険料への影響

「休職中、社会保険料の支払いはどうなるのだろう」と気になる方もいるかと思います。

結論として、病気での休職の場合、原則として社会保険料の支払い義務は続きます。ただし、ここまで説明してきたとおり、教員には段階的にセーフティーネットが用意されています。

・病気休暇:給料の全額支給される
・病気休職(1年目):給料の約80%支給される
・病気休職(2年目以降):一定の要件を満たせば、傷病手当金として標準報酬日額の3分の2程度が支給される

病気休暇・休職で給料が支給されている間は、社会保険料も給与から差し引かれますが、給与が止まったあとは、学校(または自治体の事務)から毎月請求書や連絡が届き、自分で納める場合もあります。

傷病手当金を受け取っている場合は、手当金から差し引いてもらえることもあります。手続きの方法は自治体によって異なるため、勤務先の事務担当者に確認しておくと安心です。

休職中のお金の不安を支える制度

休職中は収入が減ることだけでなく、通院や薬代といった支出もかかり、生活の負担が増えます。

ここでは、治療費の負担を軽くする「自立支援医療」と、療養が長引いた場合に所得を支える「障害年金」を紹介します。

2つの制度は役割が異なり、利用を考えるタイミングも違います。自立支援医療は通院が始まった段階から、障害年金は療養が長期化してきたときに検討する制度です。ご自身の状況に近いほうから確認してみてください。

自立支援医療

自立支援医療は、うつ病などの精神疾患で継続的な通院が必要な人の医療費負担を軽減する制度です。通常、医療費の自己負担が3割の人は、制度を利用することで対象となる通院医療費が原則1割になります。

診察代だけでなく、精神疾患の治療に必要な薬代や訪問看護なども対象です。また、所得などに応じて1か月あたりの自己負担上限額も設けられています。

例えば、病院の診察代が3割負担だと1500円の場合は、自立支援医療を利用すると1割負担で500円になります。

休職中は収入が減る一方で通院が続くこともあるため、治療費の負担を抑える手段として知っておきたい制度です。

障害年金

障害年金は、病気やけがによって日常生活や仕事が大きく制限される場合、現役世代でも受け取れる可能性がある公的年金です。

うつ病などの精神疾患も対象となります。ただし、休職しただけで受給できるわけではなく、初診日や保険料の納付状況、障害の程度などの要件を満たす必要があります。

また、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となるため、休職直後の生活費を補う制度というより、療養が長期化した場合に備えて知っておきたい制度となります。

障害年金の詳しい制度についてはこちらの記事で解説しています。

復職準備で活用できる制度・プログラム

療養を続けるなかで、体調が少しずつ安定してくる時期があります。すると、今度は「ちゃんと復職できるだろうか」という不安が出てくるかもしれません。

ここでは、教育委員会が実施する「復職支援プログラム」と、再発防止のための「リワーク」を紹介します。この2つは利用目的が異なり、両方を利用することも可能です。

なお、休職中の過ごし方や回復の段階については、こちらの記事で詳しく解説しています。復職面談で押さえておきたいポイントや、復職後の働き方まで紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。

都道府県の教育委員会が実施|復職支援プログラム

教員が復職する際は、いきなり現場に復帰するのではなく、教育委員会が実施している「復職支援プログラム」を受けることをおすすめします。

参加の扱いは自治体によって異なりますが、教育委員会では復職支援プログラムへの参加状況を復職判断の参考資料としているところもあります。

実施期間は、自治体や本人の回復状況によって異なり、原則として所属されている学校で行われます。

プログラム初期は職場の雰囲気に慣れることや軽作業から始まり、授業参観、給食・清掃指導、教材研究、TTでの授業参加、単独授業などへ進むケースがあります。

実施される内容や期間、復職の判断については都道府県で異なるため、復職支援プログラムへの参加の前に確認しておくと安心です。

再発防止のトレーニング|リワーク

再発防止のための選択肢の一つに、リワークがあります。うつ病などの精神疾患で休職している方が、職場復帰に向けて準備するための支援プログラムです。実施しているのは医療機関のほか、民間企業が運営する施設などがあります。

生活リズムの改善だけでなく、ストレス対策や職場の人間関係に向けたコミュニケーションのプログラムを通して、自分の考え方のクセに気づくきっかけになることもあります。現在のキャリアや今後やりたいことを整理したい方にもおすすめです。

なお、リワークの利用には主治医の許可が必要です。施設によっては見学できるところもあるため、気になる方は、診察時に相談してみてください。

リワークの種類ごとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

復職支援プログラムとリワークの特徴

復職準備で活用できる制度・プログラムを2つ紹介しましたが、リワークへの参加は任意となっています。

休職した教員の中には、「リワーク」と「復職支援プログラム」両方受ける方もいます。

どちらを利用すればよいか迷う場合は、いま何に不安を感じているかを基準に考えてみてください。

利用する基準

教育委員会の復職プログラム

・実際の学校現場で少しずつ勤務に慣れていきたい

リワーク

・復職後の再発が不安
・休職に至った原因を振り返りたい
・ストレス対処法やコミュニケーションの方法まで身につけたい


ただし、リワークを受けても、教育委員会の復職支援プログラムが免除されるわけではないので注意しましょう。

【体験記】元教員で2度の休職から見つけた新しい生き方とは

制度を知っても、「自分はこの先どうなるのだろう」という不安は残るかもしれません。そんな時には実際に休職を経験した先生の声が、参考になることもあります。

以下のインタビューでは、教員として働くなかでうつ病・双極症を経験し、2度の休職をしたくっぺさんが自身の体験が語られています。休職中はリワークなどを活用しながら自分自身と向き合い、復職後も働き方を調整しながら教員を続けました。

その後、約4年間の復職期間を経て教員を退職。現在は主夫として家族との暮らしを大切にしながら、自身の休職・復職経験を発信したり、講演活動を行ったりしています。

休職は「元の働き方に戻るためだけの期間」とは限りません。くっぺさんが2度の休職を経て、どのように自分に合った働き方を見つけていったのか、ぜひインタビューもご覧ください。

教員の休職は制度を理解して一人で抱え込まずに進めよう

この記事では、休職の手続きから休職中のお金について、また復職に向けた準備までをお伝えしてきました。読み始めたときと比べて、少し復職に向けた見通しが立ってきましたでしょうか。

もちろん制度を知ったからといって、不安がすべて消えるわけではないかもしれません。それでも、「何が起きるか分からない」という状態からは、少し離れられたのではないかと思います。

まずは医療機関を受診し、管理職に相談する。最初の行動はそこからでも十分です。

休むことは、これからも働き続けるための選択でもあります。まずは健康を取り戻すことを最優先に、どうかご自身のペースで、療養に専念していただければと思います。

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この記事の監修
四谷 健太郎
株式会社リヴァ リヴァトレ事業部 生活支援員 臨床心理士/公認心理師1985年東京都生まれ。
世田谷区の教育相談員→民間企業の治験コーディネーターを経て、2021年に株式会社リヴァに入社。森田療法を基にした相談支援を行っている。趣味はコーヒーのハンドドリップ。
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